受賞者インタビュー
最優秀賞・優秀賞・オーディエンス賞に輝いた3チームに、今回のピッチコンテストへ参加したきっかけから、ビジネスアイデアの組み立て方、プレゼンに向けた準備、そして本番を終えて感じたことまで、それぞれに話を聞きました。

- 【最優秀賞受賞】
本気でやってきた活動を表現するだけ
実現への熱意を伝えて
【チーム名:Voicely(ボイスリー)】
●大阪大学大学院 経済学研究科 2年 岸田 陸さん
最優秀賞に輝いたのは、大阪大学の「Voicely(ボイスリー)」。近年増加する在日外国人の日本語習得、とりわけ “発音” の課題に向き合った日本語発音コーチングサービス。すでに実際のサービスとしてローンチされているこの事業。誕生の背景やプレゼンで意識したこと、そしてこれから描く未来まで。「ビジョンと成長」を軸に、その思いを聞きました。
- Q:このビジネスアイデアに取り組もうと思ったきっかけは?
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もともとSNSで、日本語の表現や発音について発信していました。そのなかで「発音に自信がない」と感じている在日外国人の方が多いことに気づいたんです。発音が不安で話すのをためらってしまう、そんな声をよく聞きました。
そこで、音声学や行動経済学の知見をもとにしたコーチングプログラムを開発しました。それが今回発表した「Voicely」(ボイスリー)です。しばらく無料で提供していましたが、今年から有料化し、既に販売を始めています。
ピッチコンテストは今回が初挑戦です。大学のメンターに勧められ、ビジネスの第一線で活躍されている方々からフィードバックをいただける点に魅力を感じて出場しました。
- Q:プレゼンで心がけたことはなんですか
- いちばん時間をかけたのは構成です。どういう順番で話せば伝わるのか、何度も考えました。やっぱりストーリーがないと聞き手の心には届かないと思ったからです。
特に意識したのは、最初の10秒です。18チームも出場していたので、最初に興味を持ってもらえないと厳しいなと。そこで、ユーザーのペインを短いストーリーにして一気に引き込もうと考えました。
実はスクリプトは作っていませんし、話し方の練習もほとんどしていません。1回通してみて5分に収まったので、「これでいこう」と。
それでもうまく話せたのは、これが本当に自分のやりたいことだからだと思います。心から伝えたいテーマだったからこそ、言葉も自然に出てきたんじゃないかな。
- Q:ピッチ前とピッチ後で心境の変化はありましたか
- もともとあまり緊張しないタイプなので、本番も「やるべきことをやるだけ」と思って臨みました。SNSを始めて約3年。本気で活動に取り組んできたという自信があったので不安はなかったですね。
ただ、最優秀賞をいただいてからは、うれしさと同時に「これをきちんとビジネスとして広げていかなければ」という責任も強く感じるようになりました。
- Q:今後の目標を教えてください
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僕は就職活動をしていません。卒業後は、この事業一本でやっていくつもりです。
まずは、サービスの質を徹底的に高めていきたいです。動画のクオリティやクライアントへの提供方法など、細部にどこまでこだわれるかが今後の成長を左右すると思っています。
長期的には、外国人の方が日本語を話すことに自信を持てるようにサポートし、その結果、異なる国の人同士がもっと理解し合える環境をつくれたらいいですね。
- Q:次年度に挑戦する人たちにメッセージをお願いします
- 優勝を目指すなら、「そのアイデアは本当に実現可能か」という点が大事だと思います。ピッチの段階ですでにサービスをローンチし、売上や今後の成長性まで検証できているかどうかは大きなポイントで、それらのアイデアを形にしておくことが強みになります。
そして、プレゼンではとにかく熱意を持って伝えること。スクリプト通りに話すことよりも、「自分たちはこれを本気で実現したいんだ」という思いのほうが聞き手の心を動かします。
発表では、ぜひ相手の目を見て話してみてください。僕も会場の一人ひとりの表情を見ながら話しました。
ちなみに、これは応募後に知ったのですが、最優秀賞の副賞はかなり豪華です(笑)。撮影やインタビュー、メンタリングの機会など、学生起業家にとって貴重なチャンスがたくさんあります。挑戦する価値は大いにあると思います。
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- 【優秀賞受賞】
困ったときは、ビジネスの当事者たちに聞いてみる
考えるより動くことでアイデアは磨かれます
【チーム名:Stria(ストリア)】
●同志社大学 生命医科学部 医情報学科3年 雪竹 皓さん(写真)
●同志社大学 法学部 法律学科1年 杉山 穂乃香さん
●同志社大学 商学部 商学科2年 安居 悠翔さん
●同志社大学 文化情報学部 文化情報学科1年 亀田 優之路さん
優秀賞を受賞したのは、同志社大学の「Stria」(ストリア)。Striaは「story」と「media」を組み合わせた造語で、小説家とAIクリエイターをつなぐプラットフォーム。小説家が書いた物語を、AIクリエイターが予告編や短編映像として表現し、作品の魅力を伝えるこのアイデアはどのように生まれたのか。「アイデアの磨き方」をテーマに、チームを代表して雪竹さんに振り返っていただきました。
- Q:どのようなアイデアからスタートしましたか
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きっかけは、高校生の頃に観た新海誠監督の『天気の子』です。とても好きな作品で、映画館に10回以上足を運びました。その体験を機にWeb小説に出会いました。
Web小説の世界には、本業を持ちながら作品を更新している人や、同世代とは思えないほど素晴らしい作品を書く人がいます。でも、そうした作品が読者に十分届いていないと感じました。
一方で、AI動画の技術が実用化レベルになるなか、正当な評価を得られないまま制作を続けているクリエイターがいることも知りました。
それならば、両者をマッチングさせて動画をつくり、それを作品の“窓口”として置くことができればうまくいくのでは、と考えたのがこのアイデアの出発点です。
- Q:アイデアを形にする中で大変だったことは?
- 難しかったのは、作家とクリエイターの役割分担の設計です。当初は予告編ではなく、作家が選んだシーンを映像化する方法を考えていたんですが、映像制作をよく知らない作家が選ぶシーンでは、読者が「この作品を読んでみたい」と思える映像になりにくいという課題が見えてきました。
そこで、作家とクリエイターあわせて約100人にインタビューを行い、アイデアを磨いていきました。大変だったのは作家の方々とコンタクトを取ることです。主にDMで連絡をしていましたが、返信があるのは20人にひとりくらい。そこがいちばん苦労したかな。
- Q:ビジネスとしての実現可能性で大変だったところは?
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課題となったのは価格設定です。仕事として案件を受けるクリエイターさんにとってはそれなりの金額が必要ですが、作家さん側は「イラストをお願いする」くらいの感覚だったので、そのギャップを埋めていくのが課題でした。
そこでクリエイターさんにデモ作品をつくってもらい、作家さんに見てもらうことにしたんです。そうすると、「このクオリティならこれくらいの金額は必要だね」と言っていただけるようになり、認識がそろっていきました。
この経験を通して感じたのは、難しいと感じたときに、自分だけで考えていても進まないなと。実際に現場に出て当事者に話を聞いたり、メンターに相談したり。とにかく動いてみることが大事だなと思いました。
- Q:今後、このアイデアをどのように磨いていきますか
- まずは10件ほど実績をつくり、ホームページに掲載し、信頼を積み上げていきたいです。そこから少しずつ基盤をつくり、その後はプラットフォームとして正式にローンチするのが目標です。
将来的には、すべての物語に予告編があるという状態を当たり前にしたいですね。映画を観るときに予告編を見るように、本も予告編を見てから選ぶ、そんな文化を創りたいです。それが結果的に、若い世代の読書率アップにもつながっていけばいいなと思います。
- Q:次年度に挑戦する人たちにメッセージをお願いします
- 正直なところ、最優秀賞をとれなかったことは悔しいですが、同志社大学のなかではこの9年間でいちばんいい賞をいただくことができました。自分にとっても通過点のひとつとして、よい評価をいただけたことがうれしいです。
ピッチに出たことで、「エンジニアとして関わりたい」と言ってくださる方や、「小説家のコミュニティにつなげますよ」と声をかけてくださる方たちにも出会えました。自分の事業で実現したい世界がある人は、ぜひ挑戦してみてほしいです。
傲慢に聞こえるかもしれませんが、ピッチでは「自分は世界を変えられる」という精神が大事です。そして、そういう自信を持っている人たちと交流できるのもピッチコンテストの魅力です。
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- 【オーディエンス賞受賞】
アイデアの原点は幼い頃からの悩み
プレゼンでは「共感」を意識して全力で。
【チーム名:Hetal(ヘタル)】
●大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 空間デザイン学科3年 井上 佐緒里さん(写真左)
●大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 空間デザイン学科3年 櫻田 結香さん(写真中央)
●大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 空間デザイン学科3年 妹尾 勇佑さん(写真右)
オーディエンス賞を受賞したのは大阪工業大学の「Hetal(ヘタル)」。絵を描くことが苦手だったという櫻田さんの体験をもとに、大学でプロダクトデザインを専攻する3人が、「あえて絵をヘタにするツール」をつくりました。プレゼンテーションではそれらをどのように伝えたのか。アイデアの「伝え方」をテーマにお話を聞きました。
- Q:アイデアを伝えるうえで特に意識したことは?
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櫻田さん:聞いてくださる方たちに共感してもらうことをいちばんに考えました。私自身、小さな頃から絵を描くのが苦手で、手で隠しながら描いていたんです。そんな悩みをプレゼンの冒頭に話すことで、同じ悩みを持つ人たちに共感してもらえたらいいなって。
井上さん:優先順位をしっかりつけることも意識しました。アイデアを詰めていくなかで、「何をいちばん伝えたいのか」、「ちゃんと筋が通っているか」を何度も考えました。
私たちがいちばん伝えたかったのはプロダクトの良さです。そのうえでそれがどう使われて社会に貢献していくのかを話すようにしました。
妹尾さん:僕は質疑応答を担当したんですが、質問されそうなことを想定して回答を準備しました。メンターに相談したり、これまで出たピッチコンテストの審査員のコメントを思い出したり。
櫻田さん:「Hetal」の世界観を伝えることもポイントでした。スライドの中に、実際にプロダクトを使ってくれた子どもたちの笑顔の写真を入れてワクワク感を表現しました。
- Q:ピッチコンテストへの緊張や不安をどのように乗り越えましたか
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櫻田さん:準備段階では、チームの誰かひとりでも内容に不安や疑問があれば会議をしました。夜中に電話で会議をしたこともあります。全員が納得するまで話し合う、それが自信につながったと思います。
井上さん:3人の仲が良いことも緊張しない理由かな。でも、会議ではお互いが敬語で話します。仲が良いけれど公私混同しないスタイル。自然とそんな感じになりました。
櫻田さん:発表前はいつも3人でグータッチしています。それが緊張を和らげているかも(笑)
- Q:学外のピッチコンテストにはこれまで3回出たそうですが、伝え方はどのように進歩していますか
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櫻田さん:一回目はとにかく伝えることに必死で原稿を見ていましたが、今回は「思いを伝える」ことを心がけました。私たちの思いが伝わるように、聞いてくださっている方の目を見て発表しました。あとはできるだけ笑顔で話すことかな。
妹尾さん:ピッチコンテストには時間制限があるので、大切なところが漏れないように要点をまとめるようにしました。想定していた質問とは違うものもありましたが、アイデアをしっかり練っていたので答えられたと思います。
- Q:次年度に挑戦する人たちにメッセージをお願いします
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妹尾さん:いちばんは熱意ですね。その事業をやりたいという思いがあることが大事なんじゃないかと感じています。
井上さん:やはり、納得するまでチームメンバーと話し合うことですね。ひとりが突っ走るのではなく、全員が同じくらい理解して納得して発表に臨むこと。そうすればどんな質問がきても誰かが答えられると思います。
櫻田さん:私たちのチームは全員の意見をしっかり聞いて、それを揉んで、そこから新しい意見を生み出しながら進みました。いっぱい話し合ってきたので、自信を持って発表できたと思います。
それから、発表するビジネスプランによると思いますが、プロダクトがあるチームは実物を持って行ったほうがいいですね。審査員の方も想像しやすいし、納得してもらいやすいです。
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