今回最優秀賞を受賞したチーム「株式会社2ndStar」。ビジネスアイデアが生まれたきっかけや、今回のピッチコンテストに参加することを決めてからの苦労、受賞した勝因などを伺いました。
聞き手が知らない情報を盛り込み
課題に対して当事者意識をもってもらうことが大事
【チーム名:株式会社2ndStar】
●近畿大学 経済学部 経済学科4年 越智 健心さん(写真右)
●近畿大学 理工学部 社会環境工学科1年 前川 将舞さん(写真左)
●岐阜大学 工学部 社会基盤工学科4年 小和田 仰生さん

- Q:今回、最優秀賞を受賞したビジネスアイデアについて教えてください
- 越智さん:インフラ維持管理の内業を自動化するプラットフォームを開発しています。土木には、計画、調査、設計、施工、運用(維持管理)と多岐にわたる仕事が存在しますが、私たちはその中でも維持管理の領域で事業を展開しています。具体的には、アナログな手法で行われている検査報告書の作成、検査結果に対する健全度診断、検査後の補修案作成を従来の業務フローを変えずにタブレットやパソコン上で完結させることができるプラットフォームを開発しています。弊社の製品をご活用いただくことで、維持管理にかかる内業負荷を約4割ほど軽減することができます。
- Q:今回のビジネスアイデアが生まれたきっかけとは?
- 越智さん:私の家は土木工事の会社を経営していて、子どもの頃から建設現場には馴染みがありました。高校生の時には本格的にアルバイトもしていました。今、土木業界では多くのインフラが50年という耐用年数を迎え、その対策が急がれている中、業界は技術者が不足していますし、現場は非効率な事務作業に追われています。維持管理でいうと、本来の検査業務よりそのあとの報告書作成などに何倍もの時間がかかっているんです。そんな業界の課題を解決したいと思いました。
- Q:受賞できた勝因はどこにあったと思いますか?
- 前川さん:ピッチでの競争に勝つとかいちばんになることを目的にするのではなく、自分たちの事業がどのように社会課題を解決するのか、そこにフォーカスしてきたからだと思います。
越智さん:そのうえで、ピッチでは聞き手の立場にたった構成を意識しました。たとえば、「聞く人たちが知らなかった情報を提供すること」です。ネットにある情報だけでなく、現場から吸い上げてきた情報をもとに事業をしている点を伝えました。実際、プロダクトには約100人にヒアリングした結果を反映しています。もうひとつは「聞く人たちにも当事者意識をもってもらうこと」です。道路や鉄道などのインフラ事故は皆さんの生活圏でも起こることだと冒頭で強調しました。
- Q:最も苦労されたことは何でしたか?
- 越智さん:アイデアを出すところから発表まで約1年かかっていますが、意外と苦労したことはないかも。大変なことは最初から織り込み済みだったので、プランAがダメならプランBをやればいいやって感じで各ステップをクリアしてきました。大学の授業との両立は厳しかったですが、卒業もなんとかできそうです(笑)
前川さん:自分の知らないことがたくさんあるので常に苦労しているという感じでしたが、それがいやではなかったですね。乗り越えれば乗り越えるほど成長できるので、試練にひとつずつ対応していこうと思っていました。
- Q:これからの目標をお聞かせください
- 越智さん:現在、鉄道会社での試験導入が3社決まり、道路関係の企業とも話が進んでいます。来年度は有償化を前提とした試験導入を行い、再来年度は予算化したいですね。そのためにも1社ずつしっかりと対応して製品をリリースしたいです。
この事業が定着していくとインフラのメンテナンス効率を上げることができるので、事故を防いだり、事故の数を減らしていけると思っています。この業界をアップデートすることで事故がない社会が当たり前で、こんな社会で幸せだなあと気づく人を増やしたいです。いい意味で平和ボケできる社会を守るのが僕の夢です。
- Q:次年度チャレンジする方にメッセージをお願いします
- 前川さん:事業を進めているとうまくいかないこともありますが、そんなときは目の前のことにしっかり集中してください。長期的な目標をもったうえで目の前の課題に全力で取り組むことが大事かな。
越智さん:事業をしていると「若いのにすごいね」と言われますが、それと同じくらい「なぜ、きみがその事業をやるの?」と聞かれます。左脳で事業を組み立てることはもちろん重要ですが、事業を通して社会をどうしたいのかを考えることはもっと重要です。右脳のエモーショナルな部分も大事にしてほしいですね。